南日本新聞「かごしまフード風土」⑥ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【阿久根市・キビナゴのかば焼き風】

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かごしまフード風土「きびなごのかば焼き風」(阿久根)
30年以上前をピークに漁獲量が5分の1までに減ったイワシ
イワシのかば焼きは阿久根の家庭料理。庶民が手に入りにくくなった特産の代わりに食卓によくのぼったのが「きびなご」。
今回登場してくださったのは「當房さん」。取材は東シナ海を見下ろす高台のご自宅に伺いました。学校給食の調理師として子どもたちの給食を作り続けてきた當房さんが、おいしい魚料理を食べて欲しいと、きびなごをそのまま揚げて甘辛いタレをくぐらせて作ったお料理です。
郷土料理の魅力は食材・調理法が土地に適した方法で培われてきた点です。環境が変わり、食材が手に入らなくなるのは残念ですが、型にはめず進化させることも大切だなと感じる一品です。

南日本新聞「かごしまフード風土」⑤ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【肝付町岸良・クサギナの炒め物】

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7月7日南日本新聞の「かごしまフード風土」~伝えたい100年レシピ⑥は「クサギナの炒め物」でした。

以前、読者欄に「くさぎなの炒め物」が懐かしく残したい味だ、との投稿があり、思いつきました。

取材にご協力いただいたのは姶良市在住で肝付町岸良出身の金丸有子さんです。

働き者のご両親のもとで末っ子として育った金丸さん。幼いころお母さんが作るクサギナのみそ汁や炒め物は「においが嫌」、食卓にでると「またか」と思ったそう。看護師をめざし専門学校での寮生活の際も帰省するとクサギナ料理。でも、「癖のある苦みをだんだん美味しいと感じるようになった」。家庭をもつと、見よう見まねで作るようになったとのこと。

生葉は独特のにおいが鼻をつくが、塩でさっとゆでると臭みが消えて、夏場の野菜の無い時期の貴重な青みになるし、炒めるとピリッとした味としゃきしゃきした歯ごたえもいい。

お母さんは、亡くなるまで「クサギナ」を好んで食べた。豊かな自然が生みだした山のめぐみの「クサギナ」も今は、知らない人が多い。しかし、ほろ苦く深い味わいは金丸さんにとっては「消えることの無い母の味」です。

南日本新聞「かごしまフード風土」④ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【南九州市川辺・小豆のちまき】

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今日の南日本新聞「かごしまフード風土」~伝えたい100年レシピは、川辺の東達子さんに取材させていただいた「小豆のちまき」。
「あくまき」を作るときに、一緒に作った「灰汁にひたさないもち米と小豆を竹の皮につつんで煮たもの」
「あくまき」「ちまき」の区別は、「あくまき」を作る地域は難しいというかいろいろな認識がありますよね。
この記事では「灰汁を使ったちまき」=「あくまき」、「灰汁をつかわないもの」=「ちまき」としました。
そもそも、「ちまき」とは「茅(ち)」や「笹」で巻いて蒸したもちで端午の節句に作り食べたもの。ですので「あくまき」は「ちまき」の中の一つ。鹿児島では「あくまき」も「ちまき」と言ったりします。
私は子どものころ、「ちまき」と呼んでいた「あくまき」が全国にあると思っていたので、よそで「ちまき」といわれるものが真っ白だったりしてとても驚いたものです。
また「あくまき」も「落花生入り」「小豆入り」いろいろあります。
そんな、作る人が食べる人のことを思って、ちょっと工夫したり、また、その人のセンスで何かを加えてアレンジしたりっていう、生活の息づかいが聞こえる料理が大好きです。

食材も調理法も食べ方も、その人に合わせて変えていっていいのだと思います。

南日本新聞「かごしまフード風土」③ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【徳之島・アンバカスの油いため】

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 今日の南日本新聞かごしまフード風土~伝えたい100年レシピ~の掲載は「徳之島のアンバカスの油いため」でした。
「アンバカス」はあぶらかす、豚の三枚肉を揚げた保存食。戻して炒め物などに使います。
皮付のプルプルとした食感、脂身の甘味、赤身の旨みが凝縮されています。
ご紹介いただいたのは、鹿児島市小川町の「おんまとぺ」の店主、芝香織さんです。
もう7年前になりますが、かごしま郷土料理マイスター講座を始めたころ、芝さんにこの「アンバカス」のお話を聞いて、とても興味をもち実際に料理を教えていただいたとき、そのおいしさにびっくりしました。
そして、地域ごとにこんなに魅力的な食材やお料理があるのだ、もっと学びたいと心底感じたものです。
その後、ご自分の夢をかなえ、お店を開業され、徳之島・鹿児島の食文化を日々伝えていらっしゃいます!
芝さんにとって「アンバカス」料理は、おばあちゃんの教えと心意気を感じる宝物です!

 

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アンバカスの油炒め

 

食育講演 曽於市立檍小学校

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曽於市立檍小学校 第1回学校保健委員会で、保護者さんや先生方に講演をさせていただきました。
「食べ物にはドラマがある」~食から考える親子の絆~
と題し、特に、子育てに奮闘する保護者の皆さんに、
「何をどれだけ食べればいい」とか「何か結果を出す食のノウハウ」ではなく、
日々の細やかな食の経験や思いの積み重ねが、親子としての限りある時間を生涯のチカラとしてくれるという内容でお話しました。

南日本新聞「かごしまフード風土」②ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【枕崎のカツオのひっかけそうめん】

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今日5月23日掲載分は、枕崎の茅野寿満子さんに登場いただきました。
ご紹介くださった「ひっかけそうめん」は、幼いころ、お母さんが作ってくださったものです。
茅野さんには、小学2年で亡くなったお父さんがいらっしゃいました。茅野さんが赤ちゃんの頃は、「かわいい寿満子を泣かすな~」と言って、茅野さんをおんぶしてかつお節製造の仕事をしていらっしゃった子煩悩のお父さんでした。
お父さんが37歳という若さで、かつお節製造指導の出張先で亡くなったあと、お母さんはイデ小屋(かつお節製造所)をたたみ、勤めをしながら茅野さんと妹さんの2人の子どもさんを必死に育てたそうです。
近所のイデ小屋で中骨をもらい、かつおのだしたっぷりの中にそうめんと野菜を入れて、塩・醤油で味付け。血合い肉をしっかり指でとって食べ、最後は骨も折って中の髄まで食べ、残るのは美しい形の骨。
かつおのにおいの中で育てられた茅野さんは、かつおのにおいが、お父さんのにおい、懸命に育ててくれたお母さんの思い出だとおっしゃいました。

 

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鰹のひっかけそうめん

 

南日本新聞「かごしまフード風土」①ー伝えたい「100年レシピ」取材協力・レシピ監修 【霧島・押し大豆の炒りあげ】

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本日は、本格的な今年度の活動として、南日本新聞の新連載が始まりました。
「かごしまフード風土〜伝えたい100年レシピ」です。
記者さんとわたしが二人で一緒に県内各地に出向き、そこで出会った地元の郷土料理を取材するという内容です。

第1回の今日は霧島の伊地知智利子さんの「押し大豆のいりあげ」でした。

伊地知さんが幼いころ、おばあちゃんに作ってもらったこの料理には「まぶっでなあ」というおばあちゃんの言葉がいつもあったそうです。「まぶる」とは「まもる」という意味を最近知ったそうです。

伊地知さんはこれまでも、この押し大豆の炒りあげを作り続けていてお孫さんまで「5世代をつなぐ」料理となっています。

この連載は、毎月2回程度、随時の掲載となります。

人の暮らしに寄り添い、命を守り、楽しい、うれしいだけじゃなく、つらかったり、苦しかったりした思いも載せてお届けできたらと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします!